ジェムアルト グローバルセールス部門 バイスプレジデントのダミアン・ブロット氏 デジタルトランスフォーメーション(DX)とも呼ばれる変革の中でソフトウェアの重要性がさらに高まるに伴い、B2B分野の製造業においてもビジネスモデルの刷新が急務となっている。 機器や装置などの製品を販売し、その後はメンテナンスやサプライ品販売などのアフターサービスで収益を得る「モノ売り」を中心とした旧態依然のビジネスモデルから、顧客に新たなエクスペリエンス(体験価値)を提供して継続的に対価を得る「コト売り」を中心としたビジネスモデルへの転換が求められているのだ。 ただ、これは決して容易なことではない。 自社の製品あるいはそこに組み込まれているソフトウェアからどんな「コト」を提供することができるのか。 マネタイゼーションの大きな壁が立ちはだかっているのが現実だ。 この課題に対するソリューション提供で世界トップクラスのシェアを誇っているのがジェムアルトである。 同社 グローバルセールス部門 バイスプレジデントのダミアン・ブロット氏は、価値創造のために求められるものとして「収益ストリームの創造」「運用効率の向上」「ビジネスの洞察の獲得」「顧客満足度の向上」という4つの要素を挙げ、「企業が成功にたどり着くまでの複雑なジャーニーをわれわれがガイドします」と語る。 2010年以降で最も成長した企業はGAFAやアリババ、テンセントではない ジェムアルト ソフトウェアマネタイゼーション事業本部 マーケティング担当バイスプレジデントのジャム・カーン氏 ジェムアルトが提唱するマネタイゼーションの方法論をより詳しく掘り下げていこう。 同社 ソフトウェアマネタイゼーション事業本部 マーケティング担当バイスプレジデントのジャム・カーン氏は「ロボティクス、モバイル、メディカル、イメージングなど至る所に遍在するソフトウェアが、ビジネスに大きな影響力を及ぼし、イノベーションをけん引しています」と語り、ソフトウェアの重要性をあらためて強調する。 実際に2010年以降、最も劇的な成長を見せたのがどういった企業だったのかを考えてみよう。 カーン氏によれば、それはGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)でもなければ、アリババやテンセントといった中国企業でもない。 その企業とは宅配ピザチェーンのドミノピザであり、株価時価総額で実に2500%もの成長を遂げてきた。 どうやってドミノピザがこのような急成長を実現したのかというと、背景にあったのがデジタルを活用したビジネスモデルの変革である。 毎日午後5時になるとスマートフォンにピザ注文の案内が届けられ、注文ボタンをタップしておけば家に帰る頃にちょうどピザが配達されてくる、そんなアプリを展開したのだ。 カーン氏は「他の宅配ピザチェーンと比べてドミノピザが特においしいわけではありません。 それにもかかわらず顧客はなぜドミノピザに注文したかというと、『便利さ』や『早さ』を求めたからに他なりません。 『モノ』ではなく『コト』を売るとは、まさにそういうことなのです」と説明する。 まずは顧客が必要としているのが何なのかを知ることが、マネタイゼーションで成功するための第一歩となる。 その意味ではデバイスの中に組み込まれているソフトウェアも非常に重要な役割を果たす。 「そのソフトウェアを活用することで、より深く顧客とつながり行動を把握することが可能となり、ひいては顧客の嗜好やニーズを理解することができます。 提供すべき価値がデータから導き出されるのです」(カーン氏)。 国内エンタープライズITベンダーにおけるサブスクリプション移行 ジェムアルトは、このようなソフトウェアによるマネタイゼーションに必要なソリューションとして「Sentinel」を展開している。 Sentinelは、永久ライセンス販売のパッケージソフトウェアを月額利用のサブスクリプションライセンスに変更する用途を中心に、グローバルで広く採用されている。 アステリアは、システム間連携の「ASTERIA Warp」、システムとヒト(モバイル端末)をつなぐ「Handbook」、システムとモノ(IoTデバイス)をつなぐ「Gravio」、ヒトとモノをつなぐ「Patio」といった、「つなぐ」に特化したソフトウェア製品やサービスを提供しているエンタープライズITソフトウェアのベンダーだ。 同社の主力製品であるASTERIA Warpを投入したころは、ソフトウェアはパッケージ販売が主流だった。 しかし現在では、多くのソフトウェアがサブスクリプションモデルに販売形態を移行している。 これは、ソフトウェア導入の主導権が情報システム部門から現場へシフトし、より気軽に使ったり、やめたりできるソフトウェアが選ばれるようになっているためだ。 アステリア 代表取締役社長 CEOの平野洋一郎氏 同社 代表取締役社長 CEOの平野洋一郎氏は「インターネットやクラウドが普及し、ソーシャルの基盤が拡大し、さらにエンタープライズIT環境においてもデータ連携やAPI連携が容易にできるようになると、すでにある階層型の組織に仕事を割り当てるのではなく、仕事に応じて柔軟に組織を作ることが可能となります。 アステリアがサブスクリプション移行の際に最も苦労したのが、主力製品であるとともに、パッケージ販売のユーザーが最も多いASTERIA Warp(アステリア ワープ)である。 これまで販売を100%頼ってきた代理店からの反発を受けたのだ。 その直接的な理由は、単発売上の減少だが、背景としては代理店に「月額徴収の仕組みがない」「サブスクリプションモデルに対応した営業職の評価制度がない」といったこともあり、調整には約2年を費やしたという。 この課題を解決すべく同社が実施したのが、機能を限定して大幅な低価格化を図ったサブスクリプション専用製品「ASTERIA Warp CORE」(アステリア ワープ コア)の開発と、サブスクリプション専門のパートナーの開拓だ。 これが契機となって現在ではサブスクリプション比率は前年比約3. 5倍のペースで伸びているという。 「間接販売では困難だったユーザーの利用状況の直接的な把握が可能となり、ソフトウェア製品の安定的かつ継続的な成長を支えています」(平野氏)。 伝統的な製造業でも「コト売り」によるマネタイゼーションは可能 サブスクリプションに基づくソフトウェアを活用したマネタイゼーションの波は、製造業にも押し寄せている。 そして、先進的な取り組みを進めている企業は既に成果を出しているのだ。 カーン氏がその代表例として紹介したのが大手タイヤメーカーのミシュランである。 タイヤ業界は今や成熟した市場にあり、旧態依然とした「モノ売り」の中で性能やコストを競い合っても、飛躍的な成長を見込むのは困難だ。 そこでミシュランは、タイヤにセンサーを取り付け、タイヤの摩耗状態や走行距離の他、さまざまなデータの収集を開始した。 そしてこのデータを基に、燃費を改善したりタイヤ交換のタイミングをアドバイスしたりする運用コストの最適化サービスを実現したのである。 さらにこのサービスは、走行距離に応じてタイヤ使用料を支払うサブスクリプション型の「マイレージ・チャージプログラム」へと発展していった。 これにより顧客はタイヤに関するメンテナンスや廃棄などから解放され、トータル経費を最適化するという体験価値を買うことが可能となったのである。 カーン氏は「この結果としてミシュランは、タイヤから収集したセンサーデータを基に新しい収益源を創出することに成功しました。 重要なことは、タイヤのような伝統的な製品であっても『コト売り』のマネタイゼーションは可能だったことです」と述べる。 ジェムアルトのソリューションによるマネタイゼーションの成功事例 さらにカーン氏が、ジェムアルトのSentinelを用いて「コト売り」への移行を実現した事例として紹介したのが米国QSCの取り組みである。 スタジアムやアリーナ、アトラクション、テーマパーク、ホール、映画館などの施設に向けてオーディオ&ビジュアル装置を提供しているQSCは、ネットワークとソフトウェアにより音響や映像を制御したり、機能をアップデートしたりできる装置を提供したいと考えた。 こうして開発された統合型システムプラットフォーム「Q-SYS」をベースに、QSCは施設ごとの規模や特性に合わせた音声プロセッシング、制御、監視などの付加価値サービスをサブスクリプションで提供するビジネスモデルを確立することに成功したのである。 「そこから得られるソフトウェアライセンスの収益は、当初の予測を20%も上回る実績で推移しています」とカーン氏は語る。 QSCは、既存の「モノ売り」に加えて、サブスクリプションによる「コト売り」のビジネスモデルの立ち上げにも成功した もう1つカーン氏が取り上げたのは、フィリップスのヘルスケア事業部門における活用事例だ。 医療機器メーカーからヘルスケアサービス企業への転換を目指す中でフィリップスは、自分たちが提供している医療機器の価値を再定義し、ビジネスモデルを変革したのである。 「例えば超音波(エコー)検査装置は非常に高価なことから、大病院でしか導入できないという問題がありました。 これに対してフィリップスは、超音波検査装置の価値は『スキャン回数』で測るべきではないかと考えました。 大病院では月に1000回を超えてスキャンを行いますが、小規模な病院ではせいぜい100回程度です。 こうした本来の価値に応じてさまざまな医療機器を利用できるサブスクリプション型のビジネスモデルを構築したのです。 これによりフィリップスは売り上げを伸ばすとともに解約率を低減し、併せて医療機器の標準化を実現することで運用コストを下げるなど、収益向上に成功しました」とカーン氏は説明する。
次の日本では 「定額制」というワードの方が浸透しやすかったようで、 「定額制」というワードでサブスクリプション型のサービスが多数企画されています。 それは、下記のようなメリットがあるからです。 毎月確実な入金を期待できます。 事前に支払う金額の上限が分かるので、初めてでも手を出しやすくなります。 利用した分だけ得をするので、一顧客当たりの利用回数を増やすことが出来ます。 複数商品を扱う場合は、プラットフォーム化させ、商品提供企業側から広告宣伝費を徴収することも可能です。 母数と個々の会員情報が分かるので、有用なデータ収集ができます。 一方、デメリットはなんでしょうか。 使い放題に回せる商品などのリソースや、定額からオーバーした分を賄うためのコストが発生します。 安価なものだと認識され、ブランドの価値が下がる可能性があります。 顧客が飽きてしまうと、解約されてしまうリスクがあります。 そのため、常にフレッシュな体験が要求されます。 自社の欲しいメリットが最大限得られる施策を考え、 デメリットに対してきちんと対策を練ることが重要ですね。 様々なサブスクリプション(定額制)サービス それでは実際、どのようなサービスがあるのでしょうか。 事例を見てみたいと思います。 車の乗換えし放題 月額2万円程度で車の乗換えし放題というサービス。 リソースを上手く活用された例だと思います。
次の大企業も中小企業も、リカーリングを取り入れることで「継続的に収益が生み出せる」仕組みを構築できます。 従来であれば、商品を売って一度きりの収益を得るのが一般的なビジネスモデルでしたが、これからはシェアリングエコノミーや継続課金といった方法の収益モデルがオーソドックスになっていくでしょう。 勝ち組になれるビジネスを構築するためのリカーリング、その仕組みやメリットを解説します。 リカーリングとは、1つの商品を販売することで継続的な利益を生み出せるビジネスや、商品を販売せず、サービスだけを継続して利用してもらうことで利益を生み出すビジネスのことです。 最も有名なのが、プリンターで有名な「キャノン」の例です。 キャノンでは、原価に満たないほどの安価でインクジェットプリンターを販売し、専用のインクを高額で販売、 本体ではなく付属品によって継続的に安定して利益を生み出すモデルを確立しました。 インターネットビジネスでは、コンテンツへの課金もリカーリングの一つのモデルです。 新聞社や出版社では、認証システムを利用して デジタルコンテンツを月額料金で提供し、現在では多くの人が利用しています。 こういったコンテンツの課金は、継続課金だけではなく都度課金も含まれており、一つの契約で大きな利益を生み出す可能性を秘めています。 最近活発になっているのはシェアリングエコノミーによるビジネスです。 例えば カーシェアや サイクルシェアといったものが有名ですよね。 数名で1台の車をシェアするカーシェアは、都心部を中心に人気を集めています。 リカーリングはこのように、幅広いビジネス形態に対応します。 古いものでは、有料衛星テレビやケーブルテレビの設置料金からの継続課金、生命保険、映画やドラマのシリーズ物も、広い意味でのリカーリングに当たります。 媒体はソフト・ハードを問わず、ビジネス展開する業種も問わないのがリカーリングの特徴です。 ハードおよびソフトの開発や新しいIoTシステムを生み出すことができれば、中小企業でもリカーリングによって成功を収めることができるでしょう。 時代は「所有から利用へ」。 豊かな時代に生まれた子供たちが大人になった現在、物欲や所有欲は日本全体で薄れつつあります。 このようなことから、これからはリカーリングビジネスの時代だと言われています。 関連ページ: 目次• リカーリングビジネスのメリット リカーリングビジネスの 最大のメリットは「利用者がいる限り収益が続く」ことでしょう。 これまでは物やサービスが売れなければ収益が出ませんでしたが、リカーリングでは一度の契約で長期間収益を得ることができます。 顧客を取り込める コンタクトレンズを例に考えてみましょう。 以前は、長期間同じものを利用するために高いコンタクトレンズを購入していました。 現在では、毎日、毎週、毎月取り換えるタイプの新しいコンタクトレンズが主流ですよね。 4万円で購入したコンタクトレンズを10か月使用したときと、毎月5千円でコンタクトレンズを購入したとき、どのような違いが生まれるでしょうか。 10か月間の収益を見ると、高価なコンタクトレンズの場合には、売れたその時しか売り上げはカウントされません。 しかし 毎月定期購入してもらうことで、毎月一定額の収入を得ることができます。 ここにはもう一つの利点が隠れています。 それはリカーリングによって 「定期顧客になる確率が上がる」というメリットです。 高価なコンタクトを1度きりしか買わなかったとき、あなたは次も確実にそのお店でコンタクトレンズを購入すると言い切れますか?次に買う時には、もう少し安いお店を探して購入するでしょう。 もしくは、知り合いのお店を紹介されてしまったり、新しいサービスや商品に心奪われてしまうことも考えられます。 もし、コンタクトを定期購入していたら、しかもそれが「定期便」で毎月自宅に届くのであれば、わざわざ新しいお店を苦労して探す気もなくなりますよね。 リカーリングビジネスは、「より顧客ファーストなサービス」を展開し、顧客をつかんで離さないことでどんどん利益を上げていきます。 IoTであらゆるものがインターネットとつながるようになった現代では、「わざわざ手間をかけて高額の商品やサービスを購入しない」のが当たり前になってきました。 「高付加で高額」よりも、 「手間なく安価でしかも継続できる」ものが売れる時代です。 販売戦略が定めやすい リカーリングビジネスを行う上での利点はもう一つあります。 リカーリングビジネスは、顧客を一定数獲得することで顧客の購買や視聴データを活用できるようになります。 そのことでマーケティングが容易になり、データをもとに今後の販売戦略がしやすくなります。 現在の顧客はどのような層が厚いのか。 30代女性がメインであれば、さらにファッショナブルな要素をプラスするサービスを加えたり、50代男性がメインであれば体力向上に貢献できるサービスを加えたりと、具体的な販売戦略をサービス開始の早期から立てていくことができます。 リカーリングビジネスのデメリット リカーリングビジネスは、顧客数と継続率が重要となります。 ビジネスを開始した当初は、当然顧客数は0ですので、一定数の顧客を達するまでの資金力は必要です。 事前にしっかりとした資金計画を立て、余裕を持ってビジネスを展開しましょう。 そして、獲得した顧客がすぐに離脱するような状況では、顧客獲得コストを考えると収益をあげられません。 顧客の多くが利用し続けることがビジネス成立の前提となるため、提供する商品・サービスの質はごまかせません。 常に質のアップデートが必要となります。 また、リカーリングビジネスでは従来の売り切り型と比べて、顧客一人当たりの管理業務が増え煩雑化します。 顧客数増加に成功したとしても、それに比例してバックオフィスの人数も増やさなければいずれ対応できなくなり、顧客満足度の低下・解約率増加につながります。 もし人を増やせないのであれば、業務の一部をシステム化・自動化する必要が出てきます。 まとめ リカーリングビジネスは、従来の売り切り型に比べて多くのメリットがあり、顧客数増加・収益向上を見込めます。 そのためには、新規顧客獲得よりも 既存顧客維持に力を入れるべきです。 ただ、顧客維持に成功すると煩雑な管理業務が増えることにもなります。 ビジネス拡大に合わせたバックオフィス効率化をおこないましょう。 ROBOT PAYMENTが提供する 「請求管理ロボ」は、請求書発行・集金・入金消込・催促といった 請求業務の自動化・一元管理を可能にします。 リカーリング・サブスクリプションに対応しており、幅広い業種のリカーリングビジネス・サブスクリプション事業への導入実績があります。 以下のサブスクリプション事業への導入事例を参考にしてみてください。 請求管理ロボでリカーリングビジネス特有の煩雑な業務を自動化し、顧客維持に向けたアクションにリソースを割いてみてはいかがでしょうか。
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